「助けをもらっていいし、迷惑かけてもいいし、でもその代わり誰かを助けなきゃいけない。」
宮城県 本吉郡 南三陸町で聞けたことば
「助けをもらっていいし、迷惑かけてもいいし、でもその代わり誰かを助けなきゃいけない。」
横須賀市出身で、震災をきかっけに南三陸へ移住した野田篤秀さんのことば(26)2018年
幼少の頃は、電気やガス、水道が止まることは当たり前だと思っていた。
友達と話していて、それが普通ではないと早々に気が付いた。
ライフラインがない中でいかに工夫して過ごすかという知恵は身についたが、
友達と比べて、裕福な家庭ではないことにコンプレックスを感じたこともあった。
篤秀さん(以下、篤さん)は昔から、自分が「普通の人と違う」という意識を強く持っていた。
「普通」の定義は人それぞれだと思うが、篤さんは人と違うことに特に敏感で
そのことをマイナスに捉えてしまっていたという。
ところが、その「人とは違う」ところが強みとなる場面がやってくる。
東日本大震災が起きたのは篤さんが大学1年生の時だ。
電気もガスも水道も止まっている土地では、幼少期の経験が役に立つかもしれない。
自分の目、足を使って現地を感じておかなければと、震災が起きた年の8月に大学のプログラムで初めて南三陸に訪れた。
実際に足を踏み入れるとあたり一面瓦礫の山で、泥をかき分け、少し掘り進めるのにも何時間も必要だった。
電気、ガス、水道がない状況でも大丈夫だと思っていたが、自然を相手に一人の人間の無力さを痛感したという。
一人でできることなんて限られている。
そして今回の震災のように、想像を超えることがこれから先も待っているかもしれない。
自分たちの常識、つまり「普通」だと思っていることが通用しなくなった時、
一人ではできないことを認識してお互いに補い合っていくことがとても大事だと思った。
自分が「普通」ではないと思う部分は誰かに助けてもらう。
その代わり、誰かが足りていない何かは、「人とは違う」自分が補うのだ。
一人でちゃんとしなさいという世の中ではなく、できないことをできないと言い、助けを求められるようになればいい。
そんな世の中になるようにと、篤さんは南三陸で学生支援をしながら教師を目指してチャレンジしている最中だ。
篤さんは繰り返した。一人で完璧になる必要はない。
そう思うようになったのは、「普通の人と違う」ことをマイナスに捉えなくなったことの表れなのかもしれない。
「人とは違う」ことに向き合ったからこそ紡がれ、誰しもが持っているコンプレックスを暖かく肯定するような強さを持つことばだと思う。
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